DX事例

2024.05.06

クラウドサービス(kintone)活用による異動手続き・事故処理業務の効率化【異動手続き編】

今回は、「クラウドサービス(kintone)活用による異動手続き・事故処理業務の効率化【概要】」(2024.03.18)の続編として、多数の物件を対象とした火災保険や動産総合保険の異動手続きの業務効率化手法についてご案内いたします。
各ステップにおける手作業を簡略化できないか、各ステップの後続作業となるお客さまや保険会社とのやり取りを自動化できないか、という2つの視点で業務フローを設計し、それを実現するシステムを安価に構築している事例です。

 

 

■通常の異動手続きの流れ

まず、おおまかに異動手続きの流れをおさらいしておきます。

 

ステップ1: 異動事由の発生(契約者)
 契約者: 建物や動産の改築・移設・消滅など、異動事由が発生します。
ステップ2: 保険代理店への連絡(契約者)
 契約者: メール、電話、またはオンラインフォームを通じて、異動手続きの必要性を保険代理店または保険会社に通知します。
ステップ3: 必要書類の案内(保険代理店)
 保険代理店: 契約者からの連絡を受けた後、異動手続きに必要な書類と提出方法を契約者にメールや書面で案内します。
ステップ4: 書類の提出(契約者)
 契約者: 案内された方法(メール、郵送、オンラインアップロードなど)で必要書類を保険代理店に提出します。
ステップ5: 異動保険料の計算(保険代理店)
 保険代理店: 契約者からの書類にもとづいて異動内容を確認し、異動保険料を計算します。
ステップ6: 異動保険料の提示(保険代理店)
 保険代理店:計算した異動保険料を契約者に提示し、確認をとります。
ステップ7: 保険会社への手続き依頼(保険代理店)
 保険代理店: 契約者から提出された書類を確認した後、それらを保険会社に送り、異動手続きを依頼します。
ステップ8: 異動手続きの実行(保険会社)
 保険会社: 代理店からの書類と依頼を受け、異動手続きを実行します。この際、追加情報が必要な場合は、保険代理店経由で契約者に連絡を取ります。
ステップ9: 手続き完了の通知(保険会社 & 保険代理店)
 保険会社: 異動手続きの完了後、その結果を保険代理店へ通知します。
 保険代理店: 保険会社からの完了通知を受けた後、契約者へメールや書面で手続き完了を通知します。
ステップ10: 新しい保険証券の受領(契約者)
 契約者: 必要に応じて、保険代理店から新しい保険証券を受け取ります。この受領もメールでの確認や郵送での受け取りとなる場合があります。

 

ざっと書き出しただけでもそれなりの手順になります。これだけを捉えても面倒ですが、実務においてはこれだけを行うわけではなく、様々な業務と並行して進める必要があるのでかなり煩雑になるかと思います。

 

 

■システム導入による新たな業務フローとその効果

今回、kintoneをプラットフォームとした業務管理システムを構築し、以下のような業務フローを新たに構築しました。冒頭の記載したとおり、手作業と連絡の自動化を目指したもので、青字の★が業務効率化のポイントとなっています。

 

 

物件明細一覧から異動対象となる物件を検索・選択
本フローにおいては、異動事由が発生したら、まずその申請を行うために対象となる物件を選択してもらうことを最初の手順としています。ここで業務効率を損なう意外なポイントが「情報が最新の状態であるか」です。最新の状態の定義には2段階が存在していて、一つは、物件そのものの管理、もう一つは、保険の手続きの管理、とがあります。契約者が管理する一覧では保険手続きの完了までを管理していないケースが多く、手続きが完了しているかどうかを不安に思った契約者側の担当者が手続き状況を照会してくるケースがそこそこ発生します。契約者・保険代理店の双方の手間の削減に加えて、付保漏れ防止の観点でも、保険手続きが完了していることも含めた一覧の管理が不可欠です。
★ポイント:常に最新の情報を参照できる状態を維持する

 

異動内容と必要書類をフォームから登録
異動対象となる物件を選択したら、異動内容をフォームから申請していただきます。必要書類をアップロードできるのか、物件種別などの選択項目を設けることで必要な情報が正しい内容で申請される工夫がなされているフォームです。こういったちょっとした仕掛けが双方のやり取りを減らすことに貢献します。
★ポイント:必要な情報が一度で取得できる

 

システムにより異動保険料を自動計算
契約者からの申請内容にもとづいて異動保険料が自動計算される機能を実装しています。契約者が入力・選択した内容にもとづいて、料率テーブルや未経過係数などが参照され、異動保険料が掲載される仕組みをkintoneアプリとjavascriptによって実現しています。これによって計算の手間を削減し、人的ミスも予防できます。
★ポイント:複雑な保険料計算も自動化できる

 

異動内容の受付・確認
保険代理店の担当者は、契約者からの申請内容とシステムで計算された異動保険料を確認します。契約者からアップロードされた書類を参照しながら申請内容が相違ないことを確認します。書類はkintoneアプリ内に保存され、ファイルサーバなど別で管理する必要がないのでここでもひと手間を減らすことができます。
★ポイント:書類は申請内容とともにkintoneで一元管理できる

 

見積を含めた異動内容の通知
申請内容と書類の確認が終われば(仮に間違っていた場合は保険代理店の担当者側で修正し異動保険料を再計算できます)、確認フラグを立てることで、契約者への連絡はkintoneからメールで自動送信することができます。メールのひな型を予めセットしておくので文章作成の手間もありません。
★ポイント:確認した流れで契約者への通知も自動化できる

 

異動内容の最終確認
保険代理店側で確認した最終異動内容を契約者に確認していただきます。こちらは、自動送信したメールのリンクからフォームに遷移して、入力(選択)する形となります。契約者の確認結果もkintoneアプリ上で管理できるのでこれも一元管理ができます。
★ポイント:確認結果もkintoneで一元管理できる

 

所定の帳票を自動作成し通知
保険会社にはエクセル等の所定の帳票で提出する必要があるため、その帳票もkintoneのプラグインで予め設定しておくことで自動作成することができます。当該帳票が作成されれば、当該帳票のダウンロードURLが記載されたメールが保険会社の担当者に自動送信される仕組みになっています。
★ポイント:保険会社への提出ファイル作成・通知も自動化できる

 

物件明細の更新
そして最後には、冒頭で重要性をお話した物件一覧の最新化も自動で行います。この自動反映があるからこそ、手間や漏れがなく、一覧を最新の状態に維持できます。また、この一覧を契約者にも使用していただくことで、契約者と保険代理店との間の二重管理も統合できます。
★ポイント:物件明細の更新も自動化できる
※この後の異動承認申請書の取り交わしは書面でのやり取りとなります。(為念)

 

 

本件は、お客さまや保険会社とのやり取りを含めた業務フローをいかに簡略化するかの視点が、業務効率化に大きく寄与した事例です。この考え方は、異動手続き以外の業務にも広く当てはまるものと考えています。また、内部的な効率化だけでなく、お客さまにもメリットを感じていただくことで、お客さまサービスの向上と切替防止にも貢献する仕組みになるものと思われます。

 


“社外の業務フローも含めて業務を再構築することがポイント”

 

以上、一助になれば幸いです。

 

【連載記事】
クラウドサービス(kintone)活用による異動手続き・事故処理業務の効率化【概要】(2024.03.18)
⇒後編「事故処理編」ComingSoon!

 

(編集長・P太郎) 

 

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