DX事例

2024.04.30

業務部門によるノーコード開発をkintoneでトライ!

本日は、ノーコード開発プラットフォームであるkintoneをベースに、業務部門が作成したアプリを2つご紹介します。いずれの案件も、①作成担当者はkintoneはユーザーとして使ったことはある、②IT部門の担当者による伴走開発支援(IT担当者とのミーティング形式での対話型開発)、③作成時間は2時間、です。必ずしもITに精通していない人でも短時間でこれくらいのものが作れてしまう、というのを事例を通じて実感いただければと思います。また、業務部門によるシステム構築を進めることのメリットとポイントについても解説します。

 

■業務部門によるシステム構築のメリット

事例紹介の前に、なぜ業務部門によるシステム構築のメリットについてお話します。当然ながら、業務部門ではプログラミングはできないのでノーコード開発ツールによるシステム構築となります。

 

業務知識の活用
業務部門のスタッフは、自分たちの業務について最もよく理解しています。そのため、自分たちでシステムを構築することで、業務のニーズに直接対応したシステムを構築することが可能になります。実際に使用する場面をイメージしながら構築を進められるので、業務要件~システム要件(業務部門~IT部門の認識)のギャップが発生しにくいので、実用的なシステムが作れる確度が高まります。

 

迅速なシステム構築と改善
ノーコード開発ツールを使用すると、コーディングスキルがなくてもシステムを構築できます。これにより、新しいアイデアをすぐに試すことができ、必要に応じて素早く改善することが可能になります。外部委託費用が発生したりIT部門のリソースを使うような案件では当然ながら社内決裁が必要となりますが、自部門で作るのであればその手続きも割愛でき、外部委託では費用対効果が合わないものでもシステム構築を進めることができます。

 

コスト削減
ノーコード開発ツールを使用すると、外部の開発者やベンダーに依存することなく、内部のリソースだけでシステムを構築・維持することが可能になり、そのコストを削減することができます。また、業務部門における業務要件定義の手間も削減できます。業務フローや業務タスクをドキュメントで整理する過程は業務部門にとってはかなり手間な作業です。ノーコード開発ツールではアジャイル的にシステム構築を進めることができるのでこのプロセスを省略できます。

 

IT投資/ITリソースの最適化
業務部門が自らシステムを構築することで、より戦略的な分野への投資が可能となります。また、IT部門はより費用対効果の高い案件への取組にシフトすることができます。短期的には効果が見えにくいところですが、会社全体のITリテラシーの向上による中長期的な効果は甚大です。

 

 

■事例1:業務提携進捗管理表とダッシュボードの作成

 

とあるプロジェクトの協業先を管理する一覧表をkintoneに移行した事例です。それまでエクセルで管理していましたが、協業先・アプローチ先が増えてきたことに伴って、細かい進捗や状況をエクセルでは把握しづらくなってきたのでkintoneへの移行に着手。また、進捗状況をビジュアルで把握しやすくし、報告にもそのまま使えるダッシュボードを作成しました。

 

全提携先一覧(左)と提携先詳細ページ(右)
エクセルの管理表を「Excelを読み込んで作成」の機能でアプリを作成しました。使い方を想像しながらデータ形式を注意して選択するのが後々の手間を省くポイントです。これまでエクセルの管理表にはなかった対応履歴は「テーブル」の機能で実装しました。対応履歴は別アプリを作成して「関連レコード」として表示する方法もありましたが、シンプルな構造が好ましいと判断して「テーブル」としました。

 

ダッシュボード:OverView
現在の進捗を可視化したダッシュボードです。プラグインは他案件で導入済みのKrewDashboardを利用しました。IT担当者が予めプラグインを設定しておくことでスムーズに設定できました。

 

ダッシュボード:Detail
詳細を分析するためのダッシュボードです。何を設定するかは予め決めずに、どういう軸で集計・分析したいかを会話し、その場で決めて作成しました。一人で悩まずに会話しながら進められることも伴走開発の利点です。

 

ダッシュボード:Trend
時系列の推移を示すダッシュボードです。Detalにもありますが、右側に「スライサー」と呼ばれる絞り込みツールを実装しています。これによってワンクリックで分析を深掘りできます。こういった機能の実装は、機能を知らないと思い浮かばないので、IT担当者の知識を活用できるのも伴走開発の利点です。

 

 

■事例2:新設部署の案件進捗管理表の作成

 

今年度から新設された部署の案件進捗管理アプリを、既存部署の案件進捗管理アプリから作成した事例です。既存部署の案件進捗管理アプリはすでに7年以上運用されており、6つのアプリにより構成され、さらにアプリ間や外部システムとの連携もあり、複雑なものとなっています。これをシンプルなものに仕立てることをポイントとして、基本となる「顧客」「案件」「活動」の3つに絞り「ほかのアプリを再利用」の機能で作成しました。

 

顧客管理アプリ
どのアプリにも共通していますが、既存のアプリは運用によって項目が追加されており、項目数がかなり多くなっていました。一旦は既存アプリをベースに作成しますが、その後の多くの作業は不要な項目を削除することでした。項目は作ることよりも減らすことのほうが難しいものです。実際に業務を行う担当者だからこそ要不要を判断できる、これも業務部門による構築の大きなメリットです。おかげで項目数は3分の1となり、新しく着任したメンバーにとっても分かりやすいものにできました。

 

案件管理アプリ
事例1と異なり、本事例では複数のアプリを連携させる必要があります。本アプリを前述の顧客管理アプリと連携するためには、「ルックアップ」の機能を使います。顧客番号をキーに顧客管理アプリの情報を引き込めるようにしています。また、項目数は減らしたのですが依然として多かったため、「グループ」という機能を使ってまとめて表示できるようにしました。実際の項目数は変わらなくても見た目がシンプルなのでとっつきやすいものになりました。さらに、当該案件にひもづく活動履歴を「関連レコード」の機能で引き込んで表示されるようにしました。

 

活動履歴アプリ
活動履歴アプリでは、前述の2つのアプリと連携させるために、ここでも「ルックアップ」の機能を用いて連携させました。「ルックアップ」によって情報を引き込み、「関連レコード」によって相対のアプリに表示する、これができるようになった担当者はkintone初級編を卒業です。

 

事例の紹介は以上ですが、いかがでしたでしょうか。2時間という限られた時間でも、業務利用を開始できるアプリを作成できるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

 

■業務部門によるシステム構築のポイント

業務部門によるシステム構築には多くのハードルがあります。「システムは開発ベンダーやIT部門が作るもの」という文化が根強いこともありますし、そもそもノーコード開発ツールを導入していないと始まりません。弊社での経験でもっとも重要なポイント3つをご紹介してまとめとさせていただきます。

 

ユーザー体験の重視
業務部門のスタッフがノーコード開発ツールを用いてシステムを構築する際には、まずユーザーとしてツールに慣れることが重要と考えています。弊社で導入しているkintoneは数年をかけて実務で使用してもらう機会を作ってきており、「kintoneの便利さ」「さらなる活用方法」を実感してもらうことを大切にしています。ツールの利便性や拡張性を理解することで、自発的にシステム構築に取り組む意欲が湧きます。

 

主体性の尊重
システムの利用者から開発者への転換は容易ではありません。上司から指示されて取り組んでくれるスタッフもいますが、自らシステムを構築する経験は、単なるスキルアップを超えて、効率的なオペレーション設計や事業企画に役立つ知見となる、そう考えられるスタッフのほうが圧倒的に習熟度が高いです。プロジェクトの進行を加速させるためには、実務に役立てる意欲を持ったスタッフのアサインが重要です。つまり、システム構築は意欲的な人に任せるべきであり、興味と意欲を持って取り組むことで、より良い成果が期待できます。

 

IT部門による伴走開発支援
業務部門がシステム構築を行う上で、IT部門による伴走開発支援は欠かせません。kintoneの導入例を挙げると、kintoneの機能や既存プラグインの活用方法を理解し、適切なアドバイスを提供することで、技術的な障壁を克服し、効率的なシステム構築を支援できます。また、業務担当者との対話を通じて、実現したい業務フローを具体化しながら構築するためには、IT担当者の業務知識がシステム構築に大きく貢献することになります。その意味でも、IT担当者には技術知識だけでなく業務知識が求められています。

 

 


“業務部門によるシステム構築はIT部門による伴走開発が不可欠”

 

以上、一助になれば幸いです。

 

【本稿事例に関するインタビュー記事】
【ユーザーインタビュー】業務部門によるノーコード開発をkintoneでトライ!(2024.4.30)

 

(編集長・P太郎) 

 

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