DXコラム
2024.03.11
IT投資の費用対効果はどう測る?
今回は、IT投資の採算性に焦点をあてて考察します。
IT投資は、その価値を正確に評価することが難しいテーマです。システムの導入やアップグレードは、単に初期費用と運用費用だけでなく、ビジネスプロセスの効率化、従業員の生産性向上、顧客満足度の向上など、直接的でない利益ももたらすからです。
しかし、それらの効果を具体的に数値化し、費用対効果を評価する方法は存在します。本稿では、具体的なシステム導入のケースを通じて、その一つの考え方とやり方をご紹介します。
まずは、お馴染みのChatGPTに聞いたみたところ以下の回答が得られました。
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「費用対効果」とは、支出した費用に対して得られる効果を評価する指標です。システム導入においては、以下の観点で考えられます。
1.定量的効果:数値で表せる効果
・売上増加
・新規顧客獲得数
・コスト削減
・作業時間削減
・事務ミス率の低減
・質問対応時間短縮
・リードタイム短縮
・クレーム件数削減
・残業時間削減/人員削減
2.定性的効果:主観的な評価に基づる効果
・顧客満足度向上
・従業員満足度向上
・ブランドイメージの向上
・業務の継続性の向上
・ビジネスパートナーとの信頼関係の強化
・イノベーションの促進
・人材の有効活用
・業務サポートの充実
・情報の利活用の活発化
・意思決定のスピードアップ
・ワークスタイルの変化への対応
システム導入の際には、これらの効果を評価し、費用とのバランスを考慮して判断することが重要です。
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定量的効果の中には、定量的に測ることが難しいものもあります。例えば、営業活動などが主要な要因である売上や顧客数の増加においてシステム導入の効果を試算するのは困難です。そこで、更に簡単化するために、
費用:システム導入にかかる費用
効果:業務効率化による業務削減時間
と定義して、「RPA導入による顧客へのファイル連携業務の効率化」のケースを例にして考察したいと思います。
■費用の試算
システム導入に関する費用は以下のとおりです。
・RPAの開発費
弊社ではRPAは内製で開発しているため、「開発期間×社内人月単価」で計算しました。開発を外部委託する場合は、ベンダーからの見積金額を用います。なお、開発費は資産計上され5年間で償却されるため、以下に記載する費用についても5年間の費用を試算する必要があります。
・RPAのライセンス料
RPAのライセンス料が発生しますので、当該費用×5年間で計上しました。新規導入時に初期費用が発生する場合はその費用も含めます。RPAでなくクラウドサービスを導入する場合も同様です。インフラが別途費用として発生する場合はそれも含めます。
以下は本案件では計上していないですが、比較的規模の大きな開発案件を外部委託する際には必ず計上しています。
・プロジェクト推進費
IT部門・業務部門の関係者の、当該案件にかける人件費も計上します。社内打合せや資料作成、受入テスト実施など、プロジェクトの推進に多くの時間を要し、場合によっては残業も余儀なくされますので、その費用も計上する必要があるという認識です。「プロジェクトにかかる時間×時間単価」で計算します。時間単価は細かく分けずに平均値で定めておくとよいでしょう。
■効果の試算
次に効果の側面を見ていきます。
・業務削減効果
それまで人手で実施していたときの業務運用時間と、RPAを導入した際の業務運用時間をザックリと試算して、その差分を業務削減時間として算出します。「業務削減時間×時間単価」で計算します。費用の試算の際に「費用は5年間で見る」という前提にあわせて、効果も5年間で計算します。
※業務部署はIT投資の承認を得るために、業務削減時間を多めに試算する傾向があるため、業務削減時間の正当性については業務部署の責任者にコミットさせるとともに、レビュー時に再評価する必要があります。
以下は本案件では計上していないですが、システムの入替の際は重要な項目となります。
・システム運用費削減
システムの入替や乗換にあたって、システムのランニング費用を削減できる場合があります。弊社では、オンプレ環境からクラウド環境に移行することでインフラ費用を大きく削減できたケースがあります。もちろん、費用が増えるケースもあります。その場合は、増加する費用をもれなく費用側に算入する必要があります。
以下も本案件では計上していないですが、「Webプロモーションで新規のお客さまを獲得」の案件などでは明確に算出できるため計上しています。
・創出利益
Webプロモーションの企画では、お問合せから発生した成約による手数料の合計を計上しました。
以上のように、IT投資の費用対効果を評価する際には、単に費用のみならず、投資によって得られる具体的な利益を考慮に入れることが重要です。そして、それらを可能な限り具体的な数値に落とし込むことで、より明確な投資判断を下すことができます。そのうえで、費用に対する効果が何倍見込めるか、の基準を定めて判断することが肝要です。
注意点として、以下の点を考慮する必要があります。
・5年間、同じシステムを使用し続けることが可能か
5年間、業務運用が変わらず、同じシステムを使い続けることができるのであれば問題ありません。しかし、市場やお客さまのニーズが目まぐるしく変わるなかで、業務運用がまったく変わらないということは考えにくいです。1年に1回は改修が見込まれる、というような場合は、予め改修費用も計上しておく必要があります。
※システムの利用を停止するような場合は資産の除却が必要となり、未償却資産を費用として一括計上しする必要があります。これは予期せぬ追加費用となる可能性があるため当該業務の継続性の精査が不可欠です。
“費用対効果を測るためにはまず数値化することが手始め”
一助になれば幸いです。
(編集長・P太郎)
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