DX事例
2024.01.29
RPA導入による顧客へのファイル連携業務の効率化
本記事では、従業員の給与天引に関連するファイルを数百社の顧客に毎月提供する業務において、RPAを導入して効率化を図った事例をご紹介します。
■RPA導入前の業務手順
RPA導入前の業務手順は以下のようなものでした。
１）各保険会社から指定フォーマットのファイルを受領し、代理店システムにファイルをアップロード
２）代理店システム上で前月データとの差分等をチェックし、代理店システムで加工したデータを企業毎に出力
３）出力したファイルを一部修正し社内ファイルサーバの企業毎のフォルダに保存
４）当該フォルダを暗号化zipファイルにして各顧客との共有ストレージに保存
５）ストレージにアップロードしたことを顧客毎に連絡
“手作業が多い反復作業はミスも増えがち”
数百社ある顧客に対して複数のファイルが存在し、それを加工・出力し、間違いがないことを確認してアップロード、そして連絡・・・月末月初の限られた期間で完了させるために、かなりの残業を余儀なくされていた状況でした（アップロードミスは個人情報の漏えいになるため、ストレスもかなり高い業務でもありました）。
また、本業務においてRPAの導入効果が見込まれると考えられたのは、
・数百社という単位で反復手順が発生すること
・１社あたり複数ファイルが存在すること
・毎月発生する業務であること
の３点です。これらをふまえてRPAに代替できる手順の業務時間削減効果を試算したところ、かなりの残業時間を減らすことができると見込みました。
■RPA導入後の業務手順
では、RPA導入後の業務手順がどう変わったのか見ていきたいと思います。
１）各保険会社から指定フォーマットのファイルを受領し、代理店システムにファイルをアップロード
⇒数十ファイルを手作業でアップロードしていたところをRPAで代替
２）代理店システム上で前月データとの差分等をチェックし、代理店システムで加工したデータを企業毎に出力
⇒企業毎の作業となっていた出力をRPAで代替
３）出力したファイルを一部修正し社内ファイルサーバの企業毎のフォルダに保存
⇒ファイルの修正、フォルダへの保存作業をマクロで代替
４）当該フォルダを暗号化zipファイルにして各顧客との共有ストレージに保存
５）ストレージにアップロードしたことを顧客毎に連絡
■RPA導入の効果
RPAを導入したことで、以下のような効果が得られました。
・業務時間の削減
RPAが代替した手順の業務時間は、約80％削減されました。これにより、当該業務を担当するチームは月末月初の残業を大幅に減らすことができました。
・ミスの防止
ファイルの加工、保存、アップロードなどの作業を正確に実行しました。導入前にミスが発生していたわけではないですが、導入後5年間のミスは皆無です。
・業務ストレスからの大幅な軽減
RPAが代替した作業は、単純で反復性の高いものでした。これらの作業は、担当者にとってはやりがいのないものであり、ミスをした場合の責任や対応に悩むこともありました。RPAに任せることで、担当者はこれらのストレスから解放されました。
・顧客満足度の向上
また、前述の内部的な効果だけでなく、顧客に提供するファイルの品質とスピードを向上させることができたのも大きな効果といえます。
■RPA導入のポイント
本RPA導入のポイントは、２つあります。
・マクロと組み合わせた手順にしたこと
ご存じのとおり、RPAは細かなエクセル作業はさほど得意ではない（できたとしても時間がかかる）ため、エクセル作業はマクロで実装し、そのマクロをRPAで実行する流れにしました。こうすることで、３の工程で手作業を挟まずに済み、RPAで一連の作業を代替することが可能となったのです。部分的にRPAを実装すると、各手順でRPAを実行する手間や前段のRPAの完了を待つ時間が発生し、効率化効果は限定的になってしまうのです。
・手順の前後のフローを含めたこと
実は、本件の当初の相談は４におけるファイルアップロード作業のRPA化でした。ヒアリングを進めると前後にRPAやマクロで代替できる手順があることがわかり、一連の流れで構築したほうが（構築コストも増えるのですが）より高い効率化効果が得られることがわかったのが有益でした。RPAの導入対象を検討する際には個別の反復手順にフォーカスしてしまいがちですが、ほかのシステム導入と同様に、業務フローで捉えて検討していくことが大切です。
以上、一助になれば幸いです。
“部分的な手順でなく、業務フロー全体で考えることが肝要”
（編集長・Ｐ太郎）
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