DXコラム
2025.03.17
エジソンは言った「失敗なくして成功なし」
副編集長の会津藩士です。業務改善・改革がなかなか進まないのが実情ですが、良く言われている原因の1つに失敗を恐れる、避けるあまりにこれまで通りで変更しないという悪い習慣があります。耳が痛い話ですが、AIを含めたIT技術は「あっ!」という間に先に進み、実務を担当する社員だけではなく、経営層の方も自分自身で利用、活用できなければいけない状況になりました。今回は失敗を責めない会社文化という観点で書いてみます。
1. 心理的安全性の確保
【心理的安全性の重要性】
心理的安全性は、「従業員が自身の失敗や意見に対して否定的な反応を恐れず、安心して発言できる職場環境」を指します。リーダーシップ理論で有名なエイミー・エドモンドソン氏が提唱した概念だそうで、世界中でその必要性が認識されています。心理的安全性が確保された職場では、従業員のエンゲージメントが向上し、結果的にイノベーションが生まれるとされています。
日本の企業文化では、従業員が失敗を恐れるあまり、発言を控える傾向が依然として強いです。この文化的背景としては、伝統的なヒエラルキーや「失敗を悪と見なす」風潮が挙げられます。この状況を改善するには、トップダウンでの変革が不可欠です。
【戦略的取り組み】
心理的安全性の確保は、企業全体の文化改革として位置づける必要があります。具体例として以下があると思います。
リーダーのトレーニング:
リーダーシップは心理的安全性確保の鍵です。リーダーが自らの失敗を共有する姿勢を見せることで、失敗を共有する文化が下層部に浸透します。
安全なコミュニケーションの確立:
従業員が匿名で意見を述べられる仕組みや、定期的なワークショップを設けることが効果的です。まだまだ匿名での発言に不安を感じる人も多く、最近もニュースになっていますが内部告発、相談することに不安を抱えている従業員は実際には多いと感じています。日々のコミュニケーションが不足しているとどうしてもお互いに疑心暗鬼に陥り、不安、恐怖で負のスパイラルと化してしまいます。
ケーススタディの共有:
心理的安全性の向上が結果的に生産性や業績向上に寄与した他社の成功例を紹介することで、全社的な理解を深めることができます。
まずは心理的安全性の確保によって、従業員の発言量やアイデア提供の質が向上し、結果的に競争力が高まります。また、従業員満足度の向上による離職率の低下も期待できます。
2. 評価制度の見直し
【評価制度と失敗の関係性】
従来の日本の評価制度では、成功体験や結果重視の姿勢が強調されてきました。失敗は個人の能力不足として扱われることが多く、特に役職者にとっては、失敗がキャリアに直接影響する可能性がありました。しかし、成功に至るまでのプロセスには多くの学びが含まれます。そのため、失敗そのものを評価軸として取り入れることが、企業の成長に直結するのです。
【具体的な改善策】
プロセス評価の導入:
成果に到達するまでの努力やチャレンジ精神を評価基準に加えることが重要です。残念ながら「試行錯誤することが無駄、評価されない」と真っ先に考えてしまう人がまだまだ多いと思います。それは本人だけのせいではなく、職場の雰囲気だったりもしないでしょうか。
フィードバック文化の確立:
定性的なフィードバックを重視し、共に成長ポイントを見つける対話を促進します。仕事である以上、失敗ばかりというわけにいかないので、周りの人の失敗談からいかに多くを学ぶかがもとても重要なことです。
柔軟な目標設定:
「達成可能な目標」よりも「挑戦的な目標」を重視し、その過程を評価できる仕組みも重要です。少し先を見据えた目標設定をする・させることが成長につながるのは当然のことです。
3. リスクテイクの推奨
【リスクテイクの文化が競争力を支える理由】
リスクを取ることは、成長と変革の原動力です。しかし、多くの日本企業では、失敗を恐れる文化が根強く、リスクを取ることが避けられがちです。このような状況下では、競争が激化する市場での優位性を確保することは難しくなります。特にグローバルな市場においては、革新的な製品やサービスを生み出すためにリスクを積極的に取る姿勢が必要です。
【経営層の役割】
・方針の明確化と支援
経営層は、リスクテイクの文化を推奨するための基盤を構築する責任を担っています。以下は具体的な取り組み例です。
リスクテイクを奨励する方針の策定:
失敗したとしても、それが挑戦の一環であると認識される明確な方針を策定し、従業員に伝える。
成功・失敗の事例共有:
成功事例だけでなく、失敗事例をもオープンに議論する場を設けることで、挑戦を奨励する。
リスク管理スキルの育成:
失敗のリスクを最小限に抑えながら大胆に挑戦するためのスキルを社員に提供。
【具体例と戦略の実行】
たとえば、米国のベンチャー企業では、失敗を「学びの機会」と捉え、それを評価や報酬の一部に組み込むことで、従業員に挑戦を奨励しています。日本企業でも、こうしたベストプラクティスをカスタマイズし、自社の文化に取り入れることが重要です。
4. 失敗共有の推進
失敗を資産として捉える視点 失敗を隠すのではなく、オープンに共有することで、同じミスを繰り返さないための学びを得ることができます。さらに、失敗を公にすることで、リーダーシップやチームの信頼感が深まります。経営層が自身の失敗を語ることは、会社全体に安心感を与え、心理的安全性を向上させる鍵となります。
★取り組みの具体例★
「失敗の振り返り会」の設立:
四半期に一度、プロジェクトの失敗事例を共有する場を設け、そこから得られた教訓をチームで議論する。
社内ポータルでのデータベース化:
社員がアクセスできる形で失敗事例を体系的にまとめることで、組織の知見として活用。
経営陣の率先:
役員自らが率先して失敗を公開し、そのプロセスや学びを示すことで、失敗が肯定的に捉えられる文化を形成。
経営視点での効果:
失敗共有の推進は単に従業員の学びを促進するだけでなく、組織全体の透明性を高め、信頼感を生む重要な要素です。
また、失敗のデータを蓄積することで、戦略的な意思決定に役立てることができます。
5. マネジメントと従業員の信頼関係構築
【信頼関係が業績に直結する理由】
信頼感がある職場では、従業員のエンゲージメントが向上し、結果として生産性や業績にプラスの影響を及ぼします。
特に経営層が日々の業務の中で「信頼」を築くために取り組むことで、全社的なパフォーマンスが高まります。
【具体的な信頼構築のアプローチ】
1.透明性の確保:
経営方針や決定の背景を従業員に正確かつタイムリーに伝えることで、組織全体での透明性を高める。
2.双方向コミュニケーションの促進:
定期的に従業員の声を直接聞く「タウンホールミーティング」や「オープンドアポリシー」の実践。
3.経営層自身の人間的な一面の共有:
自らの経験や価値観をオープンに共有することで、従業員との心理的距離を縮める。
4.経営陣の視点での意義:
信頼関係は短期的な業績向上だけでなく、長期的な組織の持続可能性や競争力の向上に寄与します。
また、従業員の離職率低下や採用ブランドの強化にも直結します。
これらの具体的なアクションを実行に移すことで、経営層として会社全体の成長と競争優位性を確保する文化を醸成することが可能になります。
経営層の方にも考えてほしいと思う部分も多く、リーダークラスよりも上の方に向けての思いも記載した感じになっています。私自身も年齢的に「まだ数年」ではなく、「あと数年しか」会社に貢献できる期間がない人間側にいつの間にかなっています。新しい取り組み方が浸透するには時間がかかるので、今すぐに少しでも変えていかないといけないとこの記事を書いていて改めて思った次第です。
最後になりますが、副編集長として1年間記事投稿に参加してきましたが今回で定期的な記事投稿は最後となります。Web記事を書くことが初めてでしたが1年を通してみなさんからいろいろとご意見をいただき、大変勉強させていただきました。感謝申し上げます。
引き続き、IOS Techをよろしくお願いいたします。
(副編集長:会津藩士)
⇒業務改善・改革に関するご相談はこちらから
お問合せ先
事例やコラムに関するご照会、案件に関するご相談やお見積は以下のフォームからお問合せください。